僕も人並みくらい、嗜む程度に時計道楽を経てきたけれど、『ロレ』から『パテ』、『アラン・シルベスタイン』へと至り、そして今、最も気分を上げてくれるのがデンマークのデザイナー『ヤコブ イェンセン』作の角型クロノグラフ、JACOB JENSEN Rectangular 806である。
我がスタイルの一部として違和感なく溶けこんで、喫茶店でキーボードを叩く時、一人酒場でグラスに手を伸ばす時、左手首を見て心は和む。
「ええな。」
大陸マネーが時計市場を席巻し始めた頃から、フェイスサイズも大型化へと振れ始め、「高いほど有難い」と、実質を伴わない定価自体の値上げ競争、階層誇示の道具化が加速し、コディネートの小道具的には機械式高級時計は「あえて避けるべきモノ」と化してしまった。
そんなときに出会ったのがJACOB JENSEN の、この角型クロノグラフである。価格は確か5万円と少々。今から4年ほど前に日本国内では100本限定で発売されたものである。
以前から同じくJACOB JENSENの丸形クロノグラフ『601』を愛用してきたが、角型『806』は、より唯一無二なデザインで、いまだかつて類品など見たことなく、僕はひと目で落ちたのだ。
JACOB JENSENは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に19点の作品が収められているプロダクトデザイナーだけど、特に時計のデザインで存在感を放ち、無駄を削ぎ落とした姿はミニマルの極。
シンプルでいて、針、ボタン、カレンダー窓、綿密な計算バランスにより至上の美を奏でている。
特にトップ写真のように、斜め横からのルックスが最も見ごたえがあり、クロピウス作、バウハウス・デッサウ校を彷彿としてしまうのは僕のフェチ癖か。
チタニウムで作られたケースサイズは大きすぎず小さすぎず。大型化前の『ROLEX』メンズのオイスターケースと同じくらいのサイズ感である。
JACOB JENSE『601』、そして『806』。
決して大きくはない。それでいて遠目から見ても圧倒的な存在感を放つ、極めつけの美時計だと僕は思う。
それでは又!